
トリックスターと言う言葉がある。
ユング心理学の元型(アーキタイプ)の一つであり、神話や昔話に出てくる「いたずら者」のことを指す。
人を騙しては喜び、周りを引っ掻き回して滅茶苦茶にしてしまうが、その行動は主人公の成長に大きく手を貸したり、今まで席巻していた権力を覆し、新たな道を建設したりする。
HXHにおいてこの役割を担っているのは果たして誰かと尋ねれば、帰ってくる答えは恐らく一つきりだろう。
奇術師ヒソカ。
中学時代からこのトリックスターにおかしな魅力を感じていたワタシがヒソカにほれ込んだのはまあ、必然だったのだろう。
話が進めば進むほど美人になっていくヒソカに「もしかしてトリックスター性を失っていってるのではないか」危惧、落胆の念を持ち始めていたのだが、この間の2001年ジャンプ8号を見る限り、それは杞憂だったようだ。
トリックスターは策を弄してあらゆる難関を切り抜けていく能力を持っている。
それは忠実なヨハネス然り、長靴を履いた猫然り、吉四六はじめとする頓知者然りだ。
人々が山に道を欲している時に殿様の所に行き、「山で仏法僧が鳴くのです」と言う。
「それは是非聞いてみたいものだ」と殿様、家臣をつれて山を切り開きながら仏法僧とやらを探すが、くくくと鳴くは山鳩ばかり。
「仏法僧などおらぬではないか」「へえ、あっしはあのくくくと鳴くのが仏法僧とばかり」「ばか者あれは山鳩じゃ」
かくして山には道ができ、人々大喜び、頓知者も大ニコニコ。
という話があるのだが(なんとなくHXHキャラでキャスティングが出来るのが笑える)頓知者は殿様を愚弄したかどで処刑されるかも知れない危険をおかして道を建設したのである。
この間のジャンプにおいて、わざわざ団員に訝しがらせるような言い方をしつつ、預言を改竄、自分が殺される危険を冒しながらも、旅団をとどまらせることに成功(ようするに主人公の行動を助けた)したヒソカは見事なトリックスターと言えよう。
トリックスターというのは神と獣、男と女の二面性をもち、変幻自在神出鬼没だ。
あれだけ強く気高くあるのに、突然欲情しはじめたりするヒソカ。男と女の二面性についてはもうBBS等で嫌になるほど書き散らしているのでいいだろう。
ただ、牝馬に化けてスレイプニルを産んだ北欧神話のロキ、鹿の臓物で乳房と女陰を作り、男と結婚して子供を産み、飽きると男に戻って出て行くアメリカインディアンのトリックスターを見る限り、その性別の変幻自在っぷりは半端ではない、と言うことだけ挙げておく。
あの例の欲情についても思い当たるところがある。
トリックスターの体の部品は彼本人とは別の人格を持っていて、とくに右手と左手、尻と性器はそれが顕著だというのだ。
ほらほら、いろいろ思い当たるでしょう?
言うこと聞かなかったりとかするんですよ。要するに。
何故、そのトリックスター性をヒソカが無くすことを危惧しているのかと言うと、トリックスターというのは、あらゆる拷問に耐えられる存在であるのだ。どんなに酷い攻撃を受けても、何も無かったように回復できる。
トリックスター性を失わない限り。
もちろん、彼が不死身であるのに払うべき犠牲というのもある。
彼は恋愛を成就することが出来ない。
トリックスターはおよそ身分違いの恋をして、無残にも敗れることが多々ある。其の後ろでは主人公が結ばれたりしているわけだ。主人公の恋愛の手助けはするが、自分のところはからっきしなのである。
彼が恋愛を成就させ、さやに収まれば、彼の活躍はそこで止まる。
ただの人間になってしまい、その物語から退場してしまうのだ。
もうお分かりだろう。
死の権利を手に入れてしまうのである。
英雄になるのもいけない。
英雄→老王→死という図式を辿るだけだ。
まあ、ヒソカちゃんが一つの対象とか地位とかに甘んずることは無いんだろうからしばらくは平気だと思いますがね。
ひとつ、神と獣の二面性について。
トリックスターは低次元においては只の馬鹿な破壊者、高次元においては高潔な創造者だ。
ヒソカはそのどちらでもあり、どちらでも無い気がする。
忠実なヨハネスは王の子の血を捧げられ、神の像にまで近づいた、高次元のトリックスターだ。
HXHにおける子供、とは?
ヒソカはゴンを殺して最強になるのだろうか?
それとも恋愛を成就して死ぬのだろうか?
それとも・・・・・・?
※このトークはMai'Aのうろ覚えと読み齧りによって構成されていますので間違いは当然あると思ってください。